なぜ(なんで)重ね、隅肉(すみにく)溶接は下を狙うのか

令和2年11月3日この画像でわかりますよね。この細い棒を板厚9mmの鉄板に溶接する。そりゃ棒を狙って溶接せんでしょ。

板厚9mmにTIG用の溶接棒Φ2.4を溶接する。トーチは炭酸ガスアーク溶接

下の板を溶かせば棒は勝手に溶けますよね。溶けにくい方を狙う。

それがどうしたっていう方、説明は以下です。

溶接の継ぎ手形状で狙う位置が違うという話。

TIG溶接の共付け(ナメ付)のときに気付くこと。

(共付けとは、溶接棒を使わないということ)

これもTIG溶接で気付くこと。考え方は溶接共通。
電流を上げると勢いがあるという話は、こちら「すみ肉溶接はなぜ電流を上げるのか?
被覆アークだが、電流と勢いの関係をスローモーションのビデオでみれるのがこっち。

角溶接角溶接
突合せ溶接突合せ
ヘリ溶接ヘリ溶接
これらは、溶接する部材がどちらも同じ形状だ。
同じように溶かすには、
単に、
両方の部材の中心?を狙えばいい。
要は同じように熱を入れればいい。
普通にしてますよね。
角度もそれぞれの板に対して、同じにする。
(それぞれって2枚の板のこと
2枚の板の焼け具合が均一で、焼けてる幅が同じであれば上手。焼けは少ない方がいい。)
どちらも2枚の板のを溶かす。
赤い枠に熱を入れる。
板の端

で、
重ね溶接重ね
隅肉溶接T形
は、どうでしょ。

被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接だと溶接して気づくかな?

TIG溶接だとわかる。

特に、
TIG溶接の共付(ナメ付)け(溶接棒を使わないということ)。

t2以下の板厚だと穴が空く。すき間が大きいと特に穴が空く。

重ねと隅肉は
どっちも同じ話になるんで、
隅肉溶接で、
2枚の板をT形にする。この写真では凸型かな。(立てた板は2枚見えるが。。)
TIG隅肉課題の電極の狙い位置

すみ肉は、
下が板の中心(板の端ではない)、立っている方は板のを溶かす。
これは、下の板。赤い枠に熱を入れる。板の
板の中
立っている方の板。赤いわくに熱を入れる。板の
板の端
立っている板の端の方が溶けやすい。

だから、下の板に近づける。狙う。

下の板が溶けたら立て板の端は勝手に溶ける
重ねは最強に難しい
(電流を高くすると隅肉より簡単かも、大抵は電流を上げて早くできれば簡単)
(30年前のガス溶接。今は切断で使っているやつ。アークの半分3000℃くらいしかなくて溶けにくい。この重ねは最強に難しいというかできなかった。上側の板だけが溶けて重ねの上の板がはがれていくかんじだった。今の人はわからんわなー。熱集中がいいTIG、それにレーザーなんかはこんなこと気にせんでもええ。)
下を狙っているつもりでも上の板の方が上にあるからね。アークは近い方に飛びやすい。
こんな感じで下の板を狙う
重ね溶接その2
板厚が3mm以下だと下の板にビードを引く感じ。トーチの角度も下向きビード置きの感じ。
3mm以上だと板厚があるので極力すみに近づける。
3mm以上だと厚みがあるので
あたかも、すみ肉のようにトーチを板厚の立てに対して45度。
上の絵は2mm程度の板厚の傾け方。

次は、
説明のために、隅肉溶接で使う板と同じ材料にビードを引きます。
SUS304 t1.5 30x100の板に74A。
(75Aはt1.5の隅肉の電流で、突合せ溶接は端を溶かすので60A以下で十分だが、比較のためにあえて)
真ん中のビードより、端のビードの方が良く溶ける。
隅や端は、熱を逃がす所が一部、逃す方向が空間です。
真ん中のビードは、回りに熱を逃がすことができる。
すみ肉溶接の板の溶け方の違い

すみ肉溶接は、
立てた板は、板の端に
下の板は、板の中に
ビードを引く。
2枚の板は、同じ形状では無い
だから、
「すみ肉」は、「下の側を狙う」。
板の中になる方を狙う。大めに熱を入れる。
この組みあせでは、「下を狙う」。
次図は下側の板の方を狙っている。隅を狙っていない。
すみ肉の狙い位置
下側の板が溶けたら、立っている板の端はほっといても溶ける。
溶けにくい方を狙えば2枚は同じように溶けるということ。
さて、
次図は、隅肉の隅に電極があたちゃってるが、
この隅を狙うと
どうなるでしょう?
45°の角度で隅に当たるようにする。また、上から見て直角
t2.0mm以下だときっと立ってる板の端が先に溶ける。
そして、
穴が空く。もうお手上げ。
ただし、
このぐらい近づけて、短時間で流す方法もあるが、電極が汚れて仕事にならない。
こんなに近くても電流値が低いとやはり、立っている板が先に溶けてお手上げ。
電流値が高いとつくが、短時間でしないとやはり立っている板に穴が空く。
(そうならないように下を狙う)
近いと熱も高くて効率いいのと、電気は近い所を通るが、隅に近いカラ)

さて、
問題です。
次の場合は?
隅肉溶接立てが長い方
立ての板の方、上の方を狙う。
これってコツです。
もし、
溶けやすい端の方が板厚が厚い場合は?
例えば、立てがt2.0、下がt1.5なら隅を狙えばいいでしょう。
さて、
重ねはもっと難しいですね。
・アークは近い方に飛ぶ
・板の端は溶けやすい
以上の2つ。突合せ溶接が簡単に感じます。

ところで、
炭酸ガスアーク溶接ならワイヤが出てくるので訳がわからなくなるが、
やはり、板の中になってる方側を狙う。
というか、板の中の方側の板が良く溶けるようにする
アークを飛ばす。
200A以上の電流だと立て板のアンダーカットが増えるしね。立板が溶けやすいから、下側を狙う。

両手が使える溶接面 かぶり面 アイデア

板金の溶接は、あちこちを点付け、とか、少し20mmほど引くなら片手面がいいですね。 両手が使いたい。狙いを安定させるかぶり面これは、紙製。遮光ガラスは開閉式になっている。引きバネで閉まる。「うなずく」ことで遮光ガラスが閉 … “両手が使える溶接面 かぶり面 アイデア” の続きを読む

板金の溶接は、あちこちを点付け、とか、少し20mmほど引くなら
片手面がいいですね。

両手が使いたい。
狙いを安定させる
かぶり面
これは、紙製。
遮光ガラスは開閉式になっている。引きバネで閉まる。
「うなずく」ことで遮光ガラスが閉まるように片方の引きバネを外している
これ、30年前からやってたけど、今は、自動遮光が安くなってるようで
こんなことしてる人いるかな??。
最近は、「うなずき」で電極の位置が大きく動くことが多い。
かぶり面、紙製
で、
次は、プラスチック製のかぶり面。
こっちの方が安いみたい。
プラスチック製のかぶり面でのアイデア
半分開けた状態で作業をする。次の写真のように、結構いろいろな角度で止まってくれる。
プラスチック製のかぶり面
開いてるとこから見て、
電極の位置を確認して
顔を下げて遮光ガラスで溶接する。
遠近両用の老眼鏡のように、下側で直接見て、溶接時は遮光ガラスを通して見る。
BlogPaint
これは、中から写した。

点付けなら、

溶接面なしで

「うなずき」と野球帽のキャップで顔をアーク光からカバーするが、
ビードを流す場合は、この方法が便利。
自動遮光面は、初めから色が入るので見にくい。
この方法だととっても見やすい。
アイデアでしょ?

ボンデ 白

ボンデとは電気亜鉛めっき
JISの規格では、
SECC
白く見える。亜鉛メッキは薄いので塗装して使う。
会社によっては「白」と言う。
SPCCと値段が変わらないのでうちではSECCを買う。
残った板が錆びないのでいい。
ディスクトップパソコンの外は塗装されているが、
中はSECCのまま使われている。
最近の車は、SECCなのでぶつけて鋼板の表面が見えていてもサビが広がらない。

塗装されているとわからないが、町中で見るのは
SGCCだろう。
亜鉛メッキ
そのまま外でも使えるくらい厚いメッキ
SGCCというのは溶融亜鉛メッキ
これは、建築物や外の階段(亜鉛の湯に入れている写真もある)、駅の柱など白より銀色っぽく見える。
板金に使うメッキ鋼板はアマダさんを参照。

普通の鋼板やアングル材は黒。
会社によっては「黒」と言う。
表面が黒皮錆、赤錆より硬いので錆びにくい。
でも酸化皮膜なので、そのままTIG溶接すると魚のウロコのように表面に泡のようになる。
だから、グラインダーしてから溶接する。
SGCCも亜鉛メッキが分厚い(0.1mm厚程度)のでグラインダー。
構造物に使ってるんで溶接欠陥にしてはいけないわ。
でも、
SECCは、沸騰した泡が表面に出るまえにさっさと流せば見た目は大丈夫。
亜鉛の膜は0.01mm厚くらいなので亜鉛量がしれてる。
板金ではビードも短いし。
板厚も薄い:見た目第一。
黒皮の泡と
亜鉛の泡は違う
亜鉛の沸点は900程度
沸点とは気体になる温度だから、鉄は1500度で溶けるとなると
とっくに亜鉛は沸騰して泡。
だから、煙が出る。
ところで、
炭酸ガスアーク溶接だと黒皮も亜鉛もワイヤーがどんどん入るので何とかなる。
(付けるだけなら。亜鉛メッキ専用ワイヤもあるで)
亜鉛脆性というのがあり、
ステンの場合は割れる

 

ガスレンズ

ノズルが邪魔というとき、ガスレンズが付いてれば電極を出し過ぎてもシールドしてくれるだから、ノズルが邪魔にならないくらい電極を出せる。 もう一つノズルがクリアーなガラスなら電極の先端が見やすい。これ、よく見るとわ … “ガスレンズ” の続きを読む

ノズルが邪魔
というとき、
ガスレンズが付いてれば電極を出し過ぎてもシールドしてくれる
だから、ノズルが邪魔にならないくらい電極を出せる。
 
もう一つ
ノズルがクリアーなガラスなら電極の先端が見やすい。
これ、よく見るとわかりますが、ガスレンズ付きなのでさらにいい。
透明だから、網が見えますね。ガスレンズって簡単なものです。
で、
これだと電極も長めに出せるし、ノズルもガラスだから透けて見える。
 ノズルが透明ガラス

1.6径の電極がくっついたら冷えるまで待とう

これは、TIGのタングステン電極です。変ですね。これを削るのも面倒です。これは、溶融池(プール)の中に付いてタングステン電極が真っ赤な状態で強引に外すとこうなります。 冷えてから落ち着いて外しましょう。 

これは、TIGのタングステン電極です。
変ですね。
これを削るのも面倒です。
6径タングステン電極は折れやすい
これは、
溶融池(プール)の中に付いて
タングステン電極が真っ赤な状態で
強引に外すとこうなります。

冷えてから落ち着いて外しましょう。
 

いろいろなタングステン電極の比較

溶接機を買うとランタンが付いている。昔はトリタン。今はランタンを使っているが他にもいろいろあるようだ。2% thoriated, 2% ceriated, 1.5% lanthanated, 2% lanthanated … “いろいろなタングステン電極の比較” の続きを読む

溶接機を買うとランタンが付いている。
昔はトリタン。
今はランタンを使っているが他にもいろいろあるようだ。
2% thoriated, 2% ceriated, 1.5% lanthanated, 2% lanthanated, LayZr tri mix, and E3 electrodes.
と説明がある。
2%トリタン、2%セリタン、1.5%ランタン、2%ランタン、LayZr(1.5% Lanthanum, 0.08% Yttrium,

0.08% Zirconium) ???、E3 はこっちに日本語の宣伝

全部2.4mm

ランタンの角度は60度程度に削るのが溶け込みがいいみたい。

動画、ユーチューブyoutube
言葉はわからないいが
いい時代だ。 

アルミの溶接棒2本をねじって太くする

アルミ径1.2を2本、ねじって1本にして径2.4みたいに使う

アルミの溶接棒は、使い切らないと白っぽくなって酸化してしまう。
いろいろな径の溶接棒を買っているとどうしても残ってしまう。
きっちり密閉すればいいのだろうが・・・
だから、
太い溶接棒が必要なときは、
細い溶接棒でもok
万力とロッキングプライヤー(電動ドリル)でねじって使う。
つぶつぶの溶接棒が
ええ感じです。

本数を増やせば

パルスは熱を制御できる 周波数

薄板でもTIG溶接なら電流を下げることができるのでそんなに難しくないが、
パルスを使うこともできる。
溶け込み不良にもなりやすいが、すみ肉溶接はときどき強い電流が欲しい。
そんな時パルスが使える。
パルスは熱を制御できる。
原理はこれ(いただきものです。m(__)m)。手棒。