突き出し長さと電流の関係、炭酸ガス CO2 半自動 アーク溶接

ノズルの径は、20mm。ワイヤーが見えるが、アークを出した後なので先が丸くなり、熱で変色している。ワイヤーの「突き出し長さ」は12mm程度だろう。180Aの電流なら適当な突き出し長さだ。(突き出し長さとは、母材-ノズル間 … “突き出し長さと電流の関係、炭酸ガス CO2 半自動 アーク溶接” の続きを読む

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ノズルの径は、20mm。
ワイヤーが見えるが、アークを出した後なので先が丸くなり、熱で変色している。
ワイヤーの「突き出し長さ」は12mm程度だろう。
180Aの電流なら適当な突き出し長さだ。
(突き出し長さとは、母材-ノズル間の距離。正確にはコンタクトチップ-母材間。コンタクトチップがノズルから出すこともある)
この突き出し長さは、実際の電流に影響する。
180Aに調整していても、
突き出し長さを長くするとワイヤーの電気抵抗が上がるので150Aに。
突き出し長さを短くするとワイヤーの電気抵抗が下がるので230Aくらいになる。
とっても簡単に変化してしまう。
突き出し長さを一定にすることは、炭酸ガス/半自動アーク溶接の基本中の基本です。
(TIG、被覆アーク溶接ならアーク長を一定にすることが基本中の基本です。)

で、
溶接中にもっと熱を入れたかったら突き出し長さを短くすればいいし、
穴が空きそうなら、突き出し長さを長くするという方法もある。
溶接中に電流調節ができるということだ。
熱を入れる=電流を上げる:突き出し長さを短くする

電流っていう言葉は、あまり言わないな~ 電圧を上げるとビードが太くなる

普段、溶接の「電流を180ぐらいで。。。」 と言うべきところを 「電圧を180ぐらいで。。。」 「180ボルトぐらいで。。。」 って言うことないでしょうか? 普段の生活では、電圧しか言わないからしかたない。 ところで、 … “電流っていう言葉は、あまり言わないな~ 電圧を上げるとビードが太くなる” の続きを読む

普段、溶接の「電流を180ぐらいで。。。」
と言うべきところを
「電圧を180ぐらいで。。。」
「180ボルトぐらいで。。。」
って言うことないでしょうか?
普段の生活では、電圧しか言わないからしかたない。

ところで、
半自動溶接/炭酸ガスアーク溶接の溶接機だけです。電圧のつまみがあるのは。
被覆アーク溶接/手棒やアルゴンガス溶接/TIG溶接の溶接機には電圧のつまみがない。

さて、
電流の単位をご存知だろか?
A(アンペア)でしょ!
そうです。
が、
A(アンペア)って?。どんな単位?。
これを調べると1秒当たりのクーロン量が電流ですと。
電流(A=C/s)。Cがクーロン。sが1秒。
スピードはkm/hのように一時間に何キロ走ったかです。
スピードは単位があって意味がわかる。
単位って大切です。
電流をAという単位にしないでC/sの方がいい?。。と思ったが。
Cのクーロンってもっとわからない。
だからAでごまかしてもいいか。
電流もわかりにくいが、電圧や電気抵抗もわかりにくい?。
実は、電気を水にすると感覚的にわかるんです。
電流=水
電圧=水
抵抗=川の石ころ。パイプなら細いと抵抗になる。
水流モデルっでわかりやすいと思う。特にこれ
電流って電圧と抵抗で決まる。
電気機器なら抵抗とは電気の消費量。
電圧は家庭では100Vですね。
溶接機は三相交流の200Vです。
まず、
電圧が決まっていて
どんだけ流れるかは消費量(抵抗)で決まる。
抵抗があるから、どんだけ流れるか(電流)決まる。
V=RI 単位で書くとV=ΩA オームの法則 電圧=抵抗x電流

さて、さて、
普段の生活でよく聞くのは、
電圧

ワット
です。

ワットは電流x電圧です。
単位も書くと、ワット(W)=電流(A)x電圧(V)
ワットは電流も含むが、
実際に使う場面、例えば電源タップは1500W以内です。
100V(ボルト)なら15A(アンペア)以上流せないということです。
家庭なら電圧が100Vと決まっているので電流15Aまでしか流せないってキマる。
しかし、
電流のAを調べるでしょうか?
1500W以内かどうかを調べる時に使用する電気機器のワットを調べ、合計が1500以下か確認するのでやはり、電流は使いませんね。

また、
危険性から言えば電圧で表現する方が都合がいい。
100ボルトより10万ボルトの方が危険。
100Vといえば家庭用の電源。
この程度の圧では、空中を通って電気は流れません。
一方、
10万ボルトとなるとメートル単位?で空中を飛んできます。

溶接でも同様です。
(溶接で電圧を調整できるのは半自動溶接/炭酸ガスアーク溶接だけ、アーク長が電圧)
電圧が低いと圧が低いので最短距離でアークが飛びます。広がらない。狭い方が穴が空きにくいし、ワイヤーはドンドン入るんで薄板にはいい。
電圧が低いと最短距離に電気が流れる

電圧が高いと圧が高いので最短以外に広い範囲にアークが飛びます。
圧、勢いがあるもんね。
よって、
炭酸ガス/半自動アーク溶接なら電圧が高いとビードが広く、平ら(フラット)になる。
そのため、
手が震えても広いプールができているし、振れる範囲より広くアークが飛んでいるので安定しているように思える。素人にはありがたい。
すみ肉(隅肉)の場合は、電圧を高めにするとカッコよくなる。凸ではなく凹むのでいいかんじかも。
次の図は、赤い色でアークが広がっている様子。
緑の線は、ワイヤ先端だけでなく途中からでもアークが飛ぶということ。
よって、ワイヤ先端に線香花火のような丸い玉ができる。
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圧が高いと勢いがあるから、あっちこっちにアークが飛びやすくなる。
だから、
ワイヤーが玉になって落ちるようになるのだ!!
くどい
グロビュール移行みたい

炭酸ガスのプールの大きさとワイヤー径の関係 特徴

当たり前の話。 プールの大きさは直径10mmとして、 炭酸ガスアーク溶接のワイヤー径は普通1.2mm 一方、 被覆アーク溶接棒の芯線の直径は3.2とか4.0mm プールの大きさに対して目で見ている溶加棒の大きさに違いがあ … “炭酸ガスのプールの大きさとワイヤー径の関係 特徴” の続きを読む

当たり前の話。

プールの大きさは直径10mmとして、

炭酸ガスアーク溶接のワイヤー径は普通1.2mm

一方、

被覆アーク溶接棒の芯線の直径は3.2とか4.0mm

プールの大きさに対して目で見ている溶加棒の大きさに違いがある。

当たり前。

これにについて言葉で語る必要もないくらい当たり前だが、

あえて、
炭酸ガスアーク溶接(半自動溶接)の特徴として考えた。

炭酸ガスアーク溶接では、比較的ウィービングすることが多い。

大電流で使えることもあるが、9mm程度の板厚になってくるとビード幅も大きくする。

4mm棒の手棒(被覆アーク溶接棒)なら軽く置いて電流を高くしておけば10mm程度の平らなビードはできる。

下の写真は、プールの大きさ(丸の方)とワイヤーを書いた。
そのまた次が実際の写真。冷えた状態だがプールとワイヤーが見える。

開先加工して突き合わせの立向溶接の場合は、裏波溶接(一層目ビード)の幅は7mmぐらい。

これと1.2mmのワイヤーを比較してみた。

炭酸ガスアーク溶接の場合は、プール(溶融池)がよく見えるのでプール上のどこかを狙ってウィービングとかトーチを動かしている。

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ほぼストレートに上に進んでいく。プールの先頭を狙う(下図)ことで電流が低くても母材にアーク飛んで裏にも出やすい(裏波)。

キーホール(下図の開先一部が溶けた穴)の大きさが大きくなりそうだとウィービングする。

こんな7mm幅でもウィービングだ。

だいたい、
炭酸ガスアーク溶接のワイヤ(棒)が細いんだからストレートはいけまえん。
炭酸ガスアーク溶接の立向ではストレートにすると真ん中が凸なビードになる。
下向きでもストレートは凸になる。
被覆アーク溶接のようにフラックスがないから仕方ない。
フラックスがあると、特にLB-52U(被覆アーク溶接棒)裏波溶接棒だからフラックス(溶けるとスラグ)で裏波がダレてしまうのを防いでくれる。
ガラスのような被覆/スラグが固めてくれるのでフラット(平らな)なビードになりやす。

炭酸ガスアーク溶接では裏波溶接で裏に出したいためにストレートをすることはある。

しかし、ほとんどがウィービングだ。
フラットにしたければウィービングだ。
写真のワイヤーとビードの幅を比べると細い。母材を溶かすにはプール(溶融池)の進行方向側を狙う必要がある。

炭酸ガスアーク溶接、ワイヤー径とプールの大きさ(一層目)

JIS検定試験では、立向溶接は下から上に溶接します。

これはプール(溶融池)が下にたれるため、
プールの上を狙えば母材にアークが飛びやすく、溶け込みを大きくできるためです。
上の写真のキーホールは立向溶接だったら簡単につくれます。
下向きなら切るときのタイミングでキーホールが全く消えてしまう(引力の関係で埋まるんだ)。
ところで、
立向溶接で上から下に溶接をしないのかというと検定以外ならします。(30年前は手棒JISでする人が多かった。手棒しか記憶ない。当時は半自動する人が少ない。いない?)
見た目とスピードから言えば立向溶接は上から下の方が簡単で効率的です。
ただし、溶融池のたれ以上に早く下げていかないと溶け込みがわるくなる。岡山では「沸かない」(私は母材を良く溶かすこと理解)といいます。
次の写真は、立向溶接110A程度でウィービング。最終層の前にフラットにするため左右の端で結構止めます。
中はスーと早く。狙いは左端と右端という感じ。
やっているときは開先加工面がエグれているのが見えるのだが止めて写真を撮るとどうも凹みの感じは少ない。
左の方にアークが飛んだようなキズが20mmほどある。
これは、アンダーカット(えぐれ)が見えるようにしようと右端から左端にいく途中で止めたと同時にトーチを話してのでアークが飛んでいたのでしょう?。
左端が少し凹んでませんかね。
アンダーカットです。
これはウィービングで左端で止めるので普通は埋めるのです。
埋める前だと凹んでいるだろうと左向きに移動を完了する前にスイッチを切った。
赤色で囲んだ所が凹んでいる。
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なかなか開先加工面が溶けて凹んでいるのが撮れない。
溶接中は凹んでいるのがよくわかるが。。

どうも、くせのように両端では止める。
つまり、アンダーカットを埋めてから次の端に移動する。
なかなか

埋めないでスイッチを切ることができないので右から左に移動するときに(中間辺り)スイッチを切った。

開先加工面は完全にアンダーカットができるくらい溶かしている(沸かしている)ので溶け込み不良はない。
炭酸ガスアーク溶接の場合はSA-2FやSN-2FよりSA-2VやSN-2Vの方が溶け込みの関係で受かりやすいかも知れない。

また、電流を90Aくらいでもできるが、凹みが作りにくいので110Aくらいでした。

JIS検定試験を受けるならなるべく沸かすために電流は高くした方がいい。

炭酸ガスアーク溶接特有の割れ

SN-2Fの練習で
炭酸ガスアーク溶接、特有の割れがあった。
開先加工面に沿って割れ。割れた面は黒い(破断してたらキラキラ光る)。黒いのは溶け込み不良の特徴です。座布団をひくっていうやつです。
(開先加工のVの中にワイヤを溶かして置きましたって感じ)
このような割れ方は手棒では無い。
炭酸ガスアーク溶接特有の割れ
次の写真で開先加工の面で割れているのがわかる。
炭酸ガスアーク溶接特有の割れその2
対策は、以下3つ。
1,後退法(引き角)→母材にアークが当たりやすい
2,溶接スピードを上げる→母材にアークが当たる
(ゆっくりではない!!。150A以上ならゆっくりでもいいかも)
3,電流を上げる。230A以上にすると200A以下にはならないからok
(250Aくらいになる押し、引き、スピードどうでもいいかな)

原因は、対策の反対。
1,前進法(押し): 溶けたワイヤーが先行する。角度、ねかせすぎ。
2,溶接スピードが遅い:母材にアーク飛んでない
3,電流が低い。150A以下。

フラックス入り(コアード)ワイヤーとソリッドワイヤーの見分け方とJIS検定試験ではどっちを使う?

ラベルを見る溶接すればわかる。溶接するにはワイヤを取り付ける必要がある。 折ったらわかります。フラックス入りワイヤはペンチなんか使わなくても簡単に切れます・折れます。(フラックス入りは、溶接機ではコアードと書いてあること … “フラックス入り(コアード)ワイヤーとソリッドワイヤーの見分け方とJIS検定試験ではどっちを使う?” の続きを読む

ラベルを見る
溶接すればわかる。
溶接するにはワイヤを取り付ける必要がある。

折ったらわかります。
フラックス入りワイヤはペンチなんか使わなくても簡単に切れます・折れます。
(フラックス入りは、溶接機ではコアードと書いてあることが多い。コアラ、だっこからきてるんでしょう。)

フラックス入りワイヤを送給装置から外すことってめったに無いけど。
外したらわかります。
下がワイヤ送給装置。

送給装置

 リール(白い丸っぽい)を外し、ワイヤがゆるまないように引っ掛けます。下の写真。
フラックス入りワイヤの場合はこの引っ掛けるのに極端に曲げるとワイヤが切れる。
私は、車に積んで運んでいる途中に勝手に外れるので、荷造りテープで貼り付けてます。
フラックス入りワイアのリール止
フラックス入りワイアを手で折る。左側2つ。右はペンチで切った。
ソリッドワークスは、ペンチでないと切れません。
フラックス入りワイヤを手で切るには、一箇所を極端に折り曲げ、反対方向にも折ると切れます。
フラックス入りワイヤ1
フラックス入りワイヤ2

Φ1.2のワイヤです。

フラックス入のワイヤは150A以下では使わないかな。
基本的に薄物はソリッド。100A程度の低い電流だわ。
JIS検定は、ソリッドがいい。(厚板はソリッドだと時間がかかるから?)
フラック入はフラックの巻き込みの可能性がある。
ソリッドみたいに電流を下げると失敗します。
大体、見た目が良く、スパッタ処理が楽なのでフラックス入を使う。
検定では、見た目以上に強度重視だからソリッド。特に、電流が低い時はね。 どうしてもフラックス入りを使う場合は全部引き(引き角、後退法)で、押しはフラックスを巻き込みやすいので禁物です。だから電流は高く、ソリッドの1.5倍以上の電流。
よって、
強度(JIS検定)は、ソリッド
見た目、スパッタ掃除簡単は、フラックス入り 。JIS検定に使うなら電流は高く高く。

このサイトで書いている電流値のほどんどはソリッドの話。フラックを使っている方は、電流を1.5倍?+100Aくらいと考えて下さい。

フラックス入りはワイヤー送給装置のローラーの圧力にご注意。ソリッドは締めすぎOK。フラックス入りはもともと手で切れるくらい弱いし、バネをキツくすると楕円になり、送給がガクガクします。下手するとローラの所で座屈します。

パナは圧力の目安に目盛り付いてる。

フラックスワイヤーを使う場合は、めちゃくちゃ緩める。滑りだしたら少し締める方に回す。これで完了。

炭酸ガスアーク溶接の特徴 電圧調整ができるのはこれだけ

半自動溶接(炭酸ガスアーク溶接、CO2溶接)を使ったことがある人はこんなことを言われたことがないでしょうか?「突き出し長さを一定にしなさい」一方、「アーク長を一定にしなさい」とは言われたことないですね。 手棒/被覆アーク … “炭酸ガスアーク溶接の特徴 電圧調整ができるのはこれだけ” の続きを読む

半自動溶接(炭酸ガスアーク溶接、CO2溶接)を使ったことがある人は
こんなことを言われたことがないでしょうか?
突き出し長さを一定にしなさい」
一方、
アーク長を一定にしなさい」とは言われたことないですね。

手棒/被覆アーク溶接だと言われるんだな。
被覆アーク溶接(手棒、電気溶接)やTIG溶接(アルゴン溶接)では、
アーク長を一定に保つことが非常に大事です。
なぜ、
半自動溶接(炭酸ガスアーク溶接、CO2溶接)では「アーク長」という言葉がないのか?
ワイヤ送給装置が勝手にワイヤを送るので人がアーク長を調整できない
でも、溶接にはアーク長を適正に保つことが必要。
実は、機械が勝手に調整しています(適正なアーク長にしてくれる)。
人ができるのは、電圧のツマミを変えることくらい。

アーク長=電圧
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この機械は「一元」(赤く丸してるスイッチ、下は「個別」と書いてます。)のスイッチがあり、電流のツマミだけで自動的に適切な電圧を設定してくれます。
この写真の電圧の赤い矢印の先に白い点があります。ここに電圧のツマミを合わせておくと機械がベストとする電圧に設定してくれる。高めの電圧にしたければ白い点より右側に回す。
この写真の電流・電圧の設定は、クレータ電流・電圧です。
炭酸ガスアーク溶接機の本電流・電圧は、リモコンです。
「一元」も「個別」もリモコンを片手でいじりながら以下を確認して、調整する。
電圧を高めにするとアーク長が長く、広めのビードになる。
電圧を低めにするとアーク長が短く、手にワイヤが当たる衝撃を感じる。
強さは、電流ね。溶ける量、ワイヤを使う量も電流。
また、
「一元」っていっても突き出し長さがコロコロ変わったら電流も変わります
機械がアーク長を適正に調整できるくらい突き出し長さを一定にしておく技能が必要だ。
(写真はクレータの電流・電圧。溶接用の電流・電圧は手元にリモコンがあるはず。)
「一元」だと溶接する形状によっては、突き出し長さが変化しやすい場合は、「個別」にしてバタバタしないように設定する。
——定電圧特性アーク長が一定な特性の電源)———————
アーク長を一定に保つのは溶接機の電源が定電圧特性のおかげ。

定電圧特性=アーク長一定特性(私だけが言ってる造語) 

アーク長一定だからかいいのです。被覆アークやTIGではあなたが一定にしないといけん。

これを説明するには、
ワイヤ送給装置は一定の速度(速度は電流のツマミで変わる)。
を記憶してから、
アーク長が変動したら溶接電流が大きく変わるのが定電圧特性の特徴。
電流が大きく変わるとワイヤの溶融速度が増減(ワイヤの溶け方が増減)する。
ワイヤ送給は一定だから、自動的にアーク長は一定に保たれる。
(定電圧特性からして、アーク長が長くなるとワイヤが溶けなくなる。アーク長が短くなるとワイヤがよく溶ける。
ワイヤが溶けなくなるというのは電流が下がるから)

下図は、定電圧特性(黒い直線)。アーク長が変化した場合に、電圧の変化より電流の変化が激しい。これが特性。
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赤い曲線は、アークの特性曲線。上側はアーク長が長い時。下側がアーク長が短い時。
ちなみに、
ついでに、
被覆アーク溶接は、垂下特性(下側一番左の図)。TIG溶接もほぼこの特性(TIGの機械は高価だから定電流にできる)。
炭酸ガスアーク溶接の定電圧特性の反対に
電流の変化に対して電圧が大きく変わる特性。
被覆アーク溶接やTIG溶接は、アークが切れないような特性とも言える。アーク長が長くなると電圧が激大になる(アークが切れにくい、電圧の圧は勢いと理解)。電圧が激大になっても電流(溶け具合、熱量)はあまり変わらない(溶接しやすい)。

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被覆アーク溶接やTIG溶接との違い。
 被覆アーク溶接とは、以下が違う。
1,溶接棒が短くなる分だけ母材にホルダーを近づけないといけない
2,アーク長を調整する必要がある。
3,被覆材が溶融金属を覆う
 TIG溶接とは以下が違う。
1,アーク長を調整する必要がある。 
2,溶加棒を使ことがある

半自動溶接(炭酸ガスアーク溶接、CO2溶接)の特徴は、以下。
1,アーク長は機械が調整する。電圧値。
2,突き出し長さを一定にする
3,ワイヤーが自動送給
TIGも半自動も直流だ。(TIGでアルミ、マグネシウムなど表面に酸化皮膜がある材料は交流)
ただ、電子の飛び方が逆。電子がぶつかる方側が温度が上がる。
TIGのタングステン(電球のフィラメントに使う。融点3400°程度)が溶けるのではなく、材料を溶かすのでタングステン電極側から電子が飛び出すようになっている(電流では逆。電流は+から-に流れるというキマリ。昔は電気の流れる方向なんてどうでも良かったんだよね)。タングステン電極=トーチ側が-。次図はTIG溶接機。図のように母材が+。
TIG極性
半自動はワイヤがよく溶けるような極性になっている。ワイヤ側=トーチ側が+だ。

手でトーチを持って炭酸ガスアーク溶接する場合は以下のことに注意(溶接中に)する。
1,突き出し長さ(短いと電流が上がる)不安定だと120A程度に調節していても±20Aぐらい変わる
250Aなら±50A以上違う。定電圧特性だから仕方ないでしょ。電流は大きく変わるダス
2,狙い(これはどんな溶接でも必要だが他の溶接に比べシビア)
プールとアークの位置(溶接方向のプールの先頭にアーク)
3,角度
ただし、200A以下の短絡移行(ショートアーク/短絡アーク)の小電流での溶接の話。
特に、2は非常に重要だ。
これをしないと、見た目は盛れているが母材が溶けていないという結果になる。

溶接前には、電流、電圧の調整。
SN-2Fなど開先加工がある場合はルート間隔、ルート面のサイズ。
特に、ルート間隔は溶接中に変えることはできない。
上記の1から3は溶接中に変えて、調節できる。
電流は熱量。溶ける量、ワイヤを使う量。炭酸ガスアーク溶接の場合は電流を上げるとワイヤーの送給速度が上がる。
電圧は勢い。高めにするとビードが平になる/軽いウィービングと同じ結果。低めにするとワイヤーが母材に突き当たる感じになり、埋めるには都合がいい。電圧を高めにするとプール(溶融池)を一瞬外してもバタバタしない(この話は、200A以下の短絡移行での話で電流自体が高いと熱がよく入っているので違いがわからない)。
 

SN-2F 下向き突合せ溶接 9mm厚 炭酸ガス CO2 半自動 アーク溶接

炭酸ガスアーク溶接(CO2溶接、半自動) V形突合せ溶接 SN-2F (Sは半自動/セミオートのS)。SN-2H横向きはこちら

裏波溶接 1層目 プール/溶融池が見える。

9mm厚の幅25mm、長さ200mm。30度の開先加工をしている。加工はのこ盤

ルート間隔は2mmで、仮付けしている。ルート面は何もしなかった。ホントは0.5-1mm程度の面がある方が制御しやすい。電流は110A。電圧は一元(電流から自動で機械が決める)。

初めの方は、ルート間隔が2mmあったので小さなウィービングで穴が空かないようにしたが、途中でルート間隔は1mmより小さい状態になったのでストレートにしてプールの-先頭にアークが行くようにどんどん先に進んだ。終わりごろは板が温まり、熱が逃げる所が少なくなってときたま穴が開くのでウィービングに変更した。4回ほど、穴にワイヤー-が抜けるような音がしたが、裏波の結果はワイヤーがくっついているような所はなかった。
たて向き溶接なら、溶融金属(ほとんどがワイヤー)が下に垂れるので溶融金属によってアークが母材にとどく。下向き溶接で、短絡移行溶接程度(200A以下)の電流の場合はどうしても溶融金属(ほとんどがワイヤー)が邪魔して母材にアークが飛ばなくなる。だから、炭酸ガスの下向き溶接の場合は電流を高か目にした方が曲げ試験などで失敗がない。電流を下げると溶接制御はしやすいが溶接速度が遅いと母材が溶けていない(110Aで母材を溶かすスピード早くできないなら120A以上にすべきだ)。

一層目の裏波溶接。狙い優先だから前進法(押し)、板厚が9mmだからノズルがたまに当たるくらいでちょうど突き出し長さが10mmになる。長くなると電流が下がって90Aくらいに、裏まで溶けない。

裏波の状態。角が溶けて凸状態になっていれば開先加工面も溶けているはず。
下向きの場合は、プールを大きくするとビード幅が広くなり、凸にもなりやすい。(これは重力がそうしてくれている。立向溶接でそうはいかない)
SN-2F裏波側

一層目は、狙いの練習になる。
炭酸ガス溶接の場合は特に狙い。アークを発生している所が重要になる。
ワイヤー径がΦ1.2。ソリッドワイヤーSE-50Tで、電流を110A以下にしてもプール(溶融池)は8mmくらいになる。
このプールのどこでアークを発生させているかが重要です。
(手棒では交流なので正極性のタイミングがあるんで母材が溶けやすい。直径が3mm以上あるし、フラックスがかぶさっているのでそんなに意識しないかもしれないが、母材は溶けやすい。)
で、
アークを発生している所が重要になる。」何が重要?
プールの先頭でアークを発生させる=母材を溶かす。
です。
しかも、
裏波溶接は開先のすき間を狙わないと角が溶けません。
ですから、裏波の結果で思っている通りに狙えているか判断しやすい。
片溶けや溶けこみ不足などの欠陥でトーチ角度や狙い、スピードの良し悪しがわかるんです。いい練習になるわ。

二層目、三層目で特に言えることだが、
母材を溶かしていないと曲げた後、開先加工面がそのまま見えるような破断面となる。
この原因は、溶接のスピートが遅い。相当に遅い!。注意、遅いからだめなんですよ(電流が150A以下)。
電流を180Aくらいにすると少々、溶接スピードが遅くても溶込み不良は起きない。
このわれよりこっち
破断面が開先加工面

下図のように開先加工をしていると裏波溶接(一層目)は簡単だ。板厚が徐々に厚くなるので溶接時にできるキーホール(小穴)が大きくならない、だから簡単に穴をうめることができる。穴が開きそうならウィービングで逃げる。このウィービングは結構大胆に、幅広くする。ウィービングで開先加工面にアークを向ければ板厚が厚い部分なので、ルート部分に穴があくことはない。逆に、ルート部分を溶かす(裏波を出す)ならルートを狙う。
さらに、

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何度も書くが裏波を出すならルートの部分に溶着金属がたまらないようにどんどん先に進む。
裏が出ないのは、ルート間隔が狭いのではなく、スピードが遅い。
狙いがずれても、スピードが遅くなっても裏を出したいなら、
ルート間隔は、3mm。(狙いの練習にはならないが)
これなら遅くても大丈夫。穴が大きくなったら裏波成功。だが、穴をふさぐぐのは簡単。ウィービング。
結構、結構大胆なウィービングね。
炭酸ガスは、手棒に比べて裏波を出すのは簡単。

2層目

2層目と3層目は、後退法、引く。後退法(引き)にする意味は、母材をよく溶かすため。電流2層目190A程度、最終層180A程度。二層目は電圧を高めにするとすトレードでも平なビードになる。1層目は、前進法(押し)。前進法にするのは狙いを重視しているため。
1層目の電流はルート面が0.5mmでルート間隔が2mm(仮付して2mm棒が簡単に入る)なら90A。
仮付して2mm棒が入らないなら100-110Aで基本ストレート。
3mm近くあるなら80Aで基本
ウィービング。
この50mm幅の練習材料に比べ、JIS検定試験、本番の125mm幅と大きいので溶けにくい。10Aくらい高めに。
また、
ルート面は0.5mm程度なのでこれ大きい場合は、20A高め。
機械にもよるが、デジタルは100Aでもアナログの110Aって感じ。
(最終層、3層目か4層目で曲がるようならなるべく立てた前進法でもよい)
1層目は、穴が開きそうならウィービング、ルート間隔が狭く裏波が無理そうならストレート早く走る
「早く走る」って?。裏に沢山出すなら「ゆっくりだろ!」というのは普通の考え方です。溶接棒を使わない時のTIG溶接ならその考え方で正しい。しかし、ワイヤーがどんどん入ってくる半自動アーク溶接の場合で、電流150A以下の場合は「早く走る」が正解。なぜならの絵を見て下さい。
もひとつ、
「早く走る」とルート間隔のすき間をワイヤーが抜けてしまうだろ?。そうの通りです。ルート間隔が狭い場合は、そのくらいの溶接スピードでやっと裏が出ます。付け加えると、抜けたとしても一瞬です。生ワイヤーが裏に残るようなことはありません。「一瞬」の抜けで制御できないならう一瞬になるように技能アップしましょう。「一瞬」の抜け程度なら生ワイアは残りません。
ついでに、
裏を出すために溶接方向に前後のウィービングをする人がいます。
ワイヤーが裏に抜けるのを「一瞬」にしやすいこともありますが、
これ以外に、
溶接方向にウィービングについて
1、前に出すー>裏波のため
2、戻るー>盛るため。大穴防止。
半自動/炭酸ガスアーク溶接は、どんどんワイヤが送給されていることを忘れない。
なお、
「戻る」は、穴あき防止にも効果あるが、いっそウィービングする方が効果的。
このウィービングで穴がもっと大きくなるならウィービングの幅が狭い。
結構、大胆、広くウィービングする。

最後に、
裏当て材っていうのがあります。
ですから、裏波溶接っていらない?。(狙いの練習にはいい)
裏当て材を使うと裏波というよりきれいな表ビードという感じで。
見た目も溶け込みも十分。
セラミック製で溶けませんので表側からおもいっきり溶かします。
U字にへこんでいて、溶接結果は裏から見て「表ビード?」という感じです。
しかも、
凹凸が少なく上級者のビードです。
裏当て材

裏(波)が出ない
根本的には電流を上げるのだが、以下も確認。

  1. スピードが遅い
  2. 突き出し長さが長く、電流が下がっている(開先加工があるのでノズルは9mm板表面に当たる)
  3. プールの先頭にアークがいかない。(1と同じ。時たまワイヤがすき間から抜けるくらいの気持ち)
  4. 穴が開くを怖がっている(小穴こそ裏波の極意)

突き出し長さがokなら、
ほとんどが、狙いが悪い。

半自動の裏波は楽だ。電流の範囲も広い。
電流が低い。大穴があくなら電流を下げる。
しかし、
大穴が開いたら大胆、相当、大胆にウィービングすればいい。3mm程度の板じゃないので安心。9mm厚まで大穴になることは絶対にない。落ち着こう。
ウィービングは相当大胆にしないと穴はふさげない。プールの後ろ側にアークを出すのも効果的。
プールの後ろ側にアークとは、裏波を出さない方法でもある。

半自動/炭酸ガス/CO2溶接は溶融プールの先頭にアーク

短絡移行(ショートアーク)の溶接では、母材を溶かす時と肉盛りをするタイミンがある。

母材を溶かすにはプール(溶融池)の
先頭(進行方向の先) にアークが飛ぶよう溶接スピードを上げる。
肉盛りしたいならプール(溶融池)の真ん中でアークを出す。結果、溶接スピードは遅くなる。
炭酸ガス溶接はワイヤーがどんどんでてくるのでアークはワイヤーが溶けた所に飛び、母材に熱が入りにくくなって、結果的に母材は溶けない。溶け込み不良にならないようにするには、プール(溶融池)の先頭(進行方向の先)にアークが飛ぶようにどんどん先に進む。プール(溶融池)の中心にアークを飛ばしても短絡移行程度の低い電流だと母材が溶けていない。
下図は、移動しないで同じところにアークを出すとどうなるかのイメージだ。ワイヤの上にアークが飛んでワイヤが乗る(電流が高いとこんなことはないし、150A程度でも見た目はここまでひどくはない。溶込み不良になることを強調してみた。ワイヤはどんどん供給されるので母材は溶けない)。

母材は溶けない

短絡移行程度の電流では、溶接スピードが遅いと溶込み不良になる。岡山では座布団(ざぶとんって若い人は知らない?。今ならマット?)をひくと言います。「座布団ばっか置いて沸いとらんが」と。訳すと「母材を溶かしていない」。
母材をブラシに例えるとこんな感じ。ビードが歯磨き粉?を置いた感じと同じ様子。


これは1.2径のワイヤーで180A?以下の短絡移行の話し。電流が高く、材料が小さいとか厚板でない場合は比較的アークの熱が強く母材が溶けやすい。

SN-2VやSA-2V(立向き)、SN-2H(横向き)、SA-2Hは9mm厚でなおかつ短絡移行でする。これはたれないためだがこの板厚で短絡移行程度の電流だと母材が溶けないことがあるので注意が必要だ。SA-2F(下向き)の場合たれる心配がないのでなるべく電流を上げておけば曲げ試験で割れることはない。

短絡移行(1.2ワイヤでだいたい180A以下)は2つの状態がある。

  • ワイヤーが母材が当たっているとき
  • ワイヤーと母材間にアークが出ているとき

電圧を高めにすると電流が低くてもグロビュール移行のように見える。

グロビュール移行は、電流が高いためにワイヤーが母材に当たる前に溶滴になるが、

短絡移行(ショートアーク)の範囲の電流(だいたい200A以下)で電圧を上げるということはアークが飛びやすいので遠くまでアークが飛ぶ。ということはワイヤー先端だけでなワイヤー横からもアークが飛びやすくなるのでビードは広くなる。溶けこみの深さはかえって少なくなる。
電流=熱量、溶ける量が増える。なので広く熱するので深くはならない。
以前は、電流と電圧の調整が難しかったが溶接機に一元があれば簡単だ。一元とは電流(熱量)を変更すると適切な電圧に調整してくれる。さらに、電圧のメモリを真ん中にしておくと機械が調整した電圧値だが、+側やー側に回すこともできる。だいたい、2,3目盛り動かすと変化が体感できる。
電圧の調整の目安は、
電圧が高い場合は、溶滴が大きくなる。
電圧が低い場合は、ワイヤで母材をツツク感じがある。

横向き溶接 ビードの置き方 炭酸ガス/CO2溶接